周囲の正常皮膚から1mm位盛り上がった紅い湿疹様の皮疹(紅斑局面)ができ、その表面には細かい白い皮膚がめくれたようなもの(鱗屑:「りんせつ」と読みます。)がいっぱい付着しています。こういう皮疹が体のあちこちにたくさんできるのを乾癬といいます。一個一個の皮疹の大きさは数ミリ位から数十センチまで様々で、中には個々の皮疹が大きくなって融合して殆ど全身を覆うくらいになることもあります。
痒みはないかあっても軽度なのですが、患者さんによってはかなりひどい痒みを訴える方もあります。またこの乾癬がひどくなり全身に拡がり体中が真っ赤になった状態を紅皮症と言い最も重症化した状態であり発熱・全身倦怠などを伴うため入院治療が必要になります。(紅皮症になる元の疾患は乾癬だけではなく湿疹・中毒疹・など多数あります。)乾癬をしっかり治療せずに放置しておくと最終的には紅皮症になりますからきちんと治療しましょう。
基本的にはステロイド外用剤と抗アレルギー剤・抗ヒスタミン剤の内服を行います。これに長・中波紫外線(UV-A)照射を併用します。この紫外線照射の効果を高めるためソラレン(Psoralen)という化学物質を併用して紫外線を照射する(PUVA療法)ことがあります。これは良い方法ではあるのですが、一方思わぬ傷害を引き起こすため私共は行っていません。PUVA療法の前処置としてソラレンを皮疹部に外用したり内服させたりして紫外線照射を行います。その治療中は良いのですが照射後に皮疹部のソラレンの除去が不完全だったり、内服の効果が消えないうちに戸外へ出ると、当然戸外にも紫外線がありますから強烈な紫外線を浴びたのと同じことになり、大やけどを負うという事故が過去に何件も起きているからです。従って私共はソラレンを併用せずに単にUV-A照射のみを行っています。
また夏場は戸外で日光浴をすることも良いでしょう。それだけでかなり良くなる方もいらっしゃいます。紫外線療法は私共は薬と同じくらい有効性があると思います。 また重症・難治例の治療用に角化症治療剤のヴィタミンA酸誘導体の内服・外用剤も開発されています。ただしこの内服薬は催奇形性があるため妊娠可能年齢の男女(男性でも精子の奇形を起こしその精子で女性が妊娠しても奇形児が生まれる可能性があります。)には使いません。それ以外の副作用はあまり大きなものはないため私共は50歳以上で子供を作る可能性のない重症の患者さんだけに限って使用しております。
この病気は非常に治りにくく長くかかる病気で私共も治療に苦労する病気です。10年~20年と受診してみえる患者さんが多く申し訳ないと思っております。ただ一生懸命治療すればかなり良い状態を長く保てる病気ですので諦めずに根気よく治療することが肝要です。
もし放置すれば重症化して前述の紅皮症になってしまいますのでやはりその意味でも治療を続ける事が必要と思います。諦めずに根気よく治療を続けましょう。